心を込めてお焼香。宗派別作法をチェック!

葬儀や法事の際、お焼香をするとわかっているのに、ちょっと不安になってしまいますよね。他の人の仕方を真似てみて、間違ってないかヒヤヒヤしたり…、私も経験があります。周囲の視線を気にするよりも、故人へ気持ちを込めてご焼香できるよう、今一度、焼香の意味とその作法を確認しましょう。

供養の行為・焼香(しょうこう)

古来インドでは、臭気を防いで、心と体を爽快にするお香は生活必需品でした。仏教においても、お香の香りは仏の使いとも、差別のない仏の慈悲を讃えるものとされ、供養するのには欠かせないものです。葬儀や法事の際に、参列者が香を焚き、礼拝供養することを焼香(しょうこう)といいます。
確かに、香炉から宙に昇っていく煙には、霊的な情緒を感じます。

 

葬儀や法事の場面での焼香

僧侶の指示で、喪主、近親者、親族という順で、故人に縁の深い順に焼香します。その間、僧侶は読経を続けます。人数が多いと香炉を回す場合もあります。

焼香は香を右親指と人差し指で軽くつまんで目の高さまで捧げてから香炉に落とします。一般的には、1回でも2回でも3回でもよいとされています。どれだけ心を込めて焼香をしても、作法に厳しい親戚の方などに、「回数が違う」と小言を言われてはつまらないので、出来れば宗派とその作法をしっかり確認してお焼香できるとよいですね。

焼香の基本的な作法

【1】祭壇の前まで進み、遺影を仰いで深く一礼したあと、右手の親指、ひとさし指、中指の3本の指先で香をつまみます。数珠を持っているときは左手にかけて持ちます。

【2】頭を軽くお辞儀をするように下げ、香をつまんだ右手を目の高さまで捧げてから静かにくべます。手の平を返したり、左手を添えたりしない。※香をつまむ回数が宗派によって異なります

【3】遺影に向かって合掌し、故人の冥福を祈ります。数歩下がり、遺族と僧侶に軽く一礼して、自分の席に戻るか退路に従って下がります。

作法のポイント

指でつまんだお香を眉間に近づけたり、嗅いでいるように見えたりする、上記【2】の右手を目の高さまで捧げる動きを「おしいだく」と言います。物を恭(うやうや)しく顔の上方に捧げ持つ様子です。
この「おしいだく」かどうか、また香をつまむ回数が、宗派によって違います。

 

 

 

 

 

宗派別の焼香の作法

【天台宗】 おしいだき、3回香炉に入れる。

【真言宗】 おしいだき、3回香炉に入れる。

【浄土真宗本願寺派】 おしいだかずに1回だけ香炉に入れる。静かに胸元で手を合わせ、合掌礼拝する。

【浄土真宗大谷派】 おしいだかずに、2回だけ香炉に入れる。

【臨済宗】 おしいだかず、1回のみ香炉に入れる。

【曹洞宗】 1回目は頭におしいだいてから香炉に入れ、2回目はつまむだけて香炉に入れる。

【日蓮宗】焼香をつまみ、軽くおしいだき、1回または3回、香炉に入れる。3回が多い。

線香による焼香

【1】座布団の前に座り、僧侶とご遺族に一礼した後、遺影に向けて一礼。

【2】線香を右手に持ってろうそくの火に近づけ、線香に火をつける。

【3】炎が出たら左手であおぐか、線香を軽く振って消す。息をふきかけて消してはいけない。

【4】線香を香炉に立て合掌。複数の線香に火をつけた場合も、まとめてではなく1本ずつ立てましょう。

回し焼香

【1】隣の人から香炉が回ってきたら、軽く会釈して受け取る。

【2】香炉を自分の前に置いて、遺影を見てから一礼して焼香。

【3】合掌してから一礼する。

【4】香炉を次の方に回す。

合掌の作法と心

合掌は仏と合体し、結ばれることの表現とされています。

仏教では右手が仏を表し、左手が自分を表すそうです。「心を集中して、仏の心を体得させて頂きます」という意味になります。すべてを仏のはからいにまかせ、真剣に生きようとする表れが合掌する姿となり、見る者にも心の在り方が伝わります。また、右が知恵(慧)、左が実行(定)で、互いに関わり合って仏道を成就させる「慧定(ぜんじょう)」という関係になります。

慧定:思いを静め、心を明らかにして真正の理を悟るための修行法。精神を集中し、雑念を捨て去る状態に入り、寂静の心境に達すること。

プチ疑問① 焼香のとき、座布団をずらすべき?

焼香の時、「座布団に座るのを遠慮すべき」という考えから、横によけてしまう人もいますが、おいてある座布団は「どうぞここに座って下さい」と指定しているので、よけるのはかえって礼儀に反することだそうです。不安になりそうなマナーのひとつですが、焼香の時は座布団に座って問題ありません。

プチ疑問② 線香やろうそくの火、息をふきかけて消すのがNGな訳


線香やろうそくの火、手で仰いで消さなくてはいけないのは知っていても、なかなか消せないときには焦り息を吹きかけたくなりますが、故人に失礼になるのはもちろん、見た人の気分も害してしまいます。「人の顔に息をかけるのは失礼」という感覚でタブーと承知できますが、仏教的にも人の息は「穢れた不浄なもの」とされているので、決して息で吹き消してはいけません。
落ち着いて手で消すか、扇ぎ消す道具として「仏扇」や被せて消す「ろうそく消し」もあります。準備しておくと、家族も来客の方も安心できそうです。

何気なくしていた焼香に、仏の慈悲を讃え、故人を供養する意味がありました。合掌も、仏に近づかんとする意味と見ると、ありがたさと心に響くものが違うように感じます。「決まっている作法」としてただ形式的にするのではなく、ひとつひとつの動きの意味を知ることで、より深い真心で葬儀や法要に参加できそうです。
マナーと真心の両方で以て、仏様と故人、また周囲の人々に想いが通じる振る舞いを心がけたいですね。