かけこみ寺はありますか?~災害時の寺院~

今回のほとけ便りは、防災について考えてみたいと思います。

「必ず来る」と言われている巨大地震に備え、私も防災時のチェックリストにならって、水・食料の備蓄をそれなりにしています。

防災リストのチェック項目に加えておくのがいいと思うのが、近所の馴染みのお寺・神社などの宗教施設です。そう思うには、3.11の実体験があります。

2011年3月11日のほと子の体験記

東日本大震災が起こった2011年の3月11日、私はとある講義を受講していた台東区・浅草橋から、当時住んでいた豊島区・目白まで徒歩で帰宅しました。揺れがあったので地震があった、ということだけはわかっていましたが、電車が動く見込みはなく、携帯電話はつながらず何も情報がないまま、夕方4時半からひたすら歩き始めました。
震源地が東北であること、その東北の街が水に埋まる惨状を知ったのは、夜8時頃。施設を無料開放していた新宿区の教会、そこのテレビモニターのニュース映像からでした。教会には私と同じように、徒歩で帰宅する人達が沢山休んでいました。ニュース映像にショックを受けながらも、ソファーで冷たいお茶を頂き、しばしの休息になり、とてもありがたかったのを覚えています。
その教会の存在は、その時初めて知りました。

避難場所としての宗教施設

 

 

東日本大震災の際、被災地では、100以上の寺院・神社等宗教施設が緊急避難所となりました。震災後は宗教施設と災害協定を締結する自治体が増え、災害時に果たす寺社の役割に関心が高まっています。自治体と宗教施設が連携を進める大学の研究も活発に行われています。
人が集まる場所に物資や情報が集まります。
私にとっても、ただ家を目指して歩くしかなかったその時、震源地とその現状を知る〈情報〉、冷たいお茶〈物資〉、そして休める場所〈避難所〉を与えてくれたのは教会・宗教施設でした。
何かあったときに、あそこに行けばなんとかなる、そう思える存在があるのは大事なことではないでしょうか。また、心細い時に、ご住職や神主様、牧師様、またそこに集うご近所の知っている顔があるのとないのとでは、安心感も大きく違うことでしょう。

かけこみ寺へのアンテナ

 

 

地域コミュニティとの関係が密接で、地域住民の愛着や帰属意識の強い社寺ほど、避難所になった時に円滑に運営されることが判明したそうです。地域の人々との日常的なつながりがなければ、受け入れはより簡単ではないでしょう。そういう意味で、特に都会の社寺は、つながりが希薄な点が課題視されているそうです。住民である私たちが、お寺や神社に日々、どれだけ親しみをもてるかもてる街づくりがされているか、ということになります。
街づくりに参加する、というのは大掛かりに思えますが、いざというときにかけこめるお寺や神社などについて、普段アンテナを張っておくのはいいことだと思います。そういえば、私が上京してから足を踏み入れたお寺や神社、教会は、バザーや季節のイベント、慰霊祭などの行事でお邪魔させて頂いたのがきっかけです。そういった人を集めるイベントをしている神社やお寺は、地域住民とのやり取りに慣れていて、自治体との連携もよりスムーズに進むのではと期待されます。

今回、防災とお寺について調べたところ、自治体と共同の防災訓練を行うお寺もありましたし、指定避難所ではないものの、倉庫の建て替えや備蓄の準備をしているお寺もありました。(※以前書いた「“死の体験旅行”体験記」でお邪魔した会場、真言宗豊山派 金剛院の蓮華堂 は、避難所としての役割をふまえて建てた建物だそうです )

〈地域の宗教施設・自治体から発信されている情報を受け取れているか〉

〈もし災害があったら、自分にとってのかけこみ寺はどこになるのか〉……。

今いちど考えておくのは、きっとよいことだと思います。
何かあった時に声をかけられるご近所さん、ご近所のお寺、神社。皆さんが、住んでいる街ともっと親しくなろうと思うことが、防災の第一歩なのだと思います。都内に住む私は、お馴染みの神社と、いくつか気になっているお寺があります。ただ、今のアパートに住んでいる方々に、もうすこし意識的に挨拶していこうと思います。

 

お寺の為のガイドブック

災害時に機能しようとするお寺の為のガイドブック。私たちが読んでも為になります。

 

・仏教情報総合サイト ブッダワールド『お寺の為の防災ガイド 保存版』

被災地の寺院が災害に対して行うべき備えや避難所になった際に必要なことを伝えるガイドを無料発行中。

 

・仏教NGOネットワーク『寺院備災ガイドブック』

東日本大震災の被災地寺院の教訓を取り入れた、寺院が災害に備えるガイドブックが公開中。

全頁、pdfでスマホでも閲覧できます。郵送でも申し込みできます。